医療保険に加入する前に知っておきたい3つのこと
医療保険に加入するときには保険金額や保障期間などを自分で設定する必要があります。
しかし、保障内容をよく理解していなかったり入院経験が少なかったりすると、どのような設定が自分にあっているのか分からず悩んでしまうことでしょう。
そこで、医療保険の保障内容にかかわる医療事情をお伝えします。
入院給付金日額の選択時は実際にかかる費用を知る
医療保険では基本的に病気やケガで入院した場合に給付金が支払われます。
この給付金で1日あたり受け取れる金額を「入院給付金日額」といい、3,000円・5,000円・10,000円などから自分で選びます。
選択する上で参考になる「実際にかかる費用」をみていきましょう。
入院給付金日額は入院した場合に1日にかかる費用で考えます。入院時にかかる費用は大きく健康保険が使える費用と使えない費用とに分かれます。
健康保険が使える費用は、通常の検査や手術費、差額ベッド代を除く部屋代などで、実際の自己負担は1~3割(年齢や所得によって異なる。70歳未満は原則3割)。
さらに「高額療養費制度」によって、ひと月にかかる医療費が一定額(自己負担上限額)以上はかかりません。
高額療養費制度の自己負担上限額は年齢や所得によって異なり、例えば、医療費が100万円で窓口負担が30万円の場合、年収約370万円~約770万円の方は約9万円になります。
そのため、仮にひと月の間に30日間入院したとしても、治療費等の自己負担は入院1日あたり約3,000円です。
これを短期入院で考えると1日単位の費用は大きくなりますが、この3,000円は入院給付金日額として最低必要な金額の一つの目安になります。
一方、入院時にかかる費用には健康保険が使えないものもあります。
健康保険が使えない費用の主なものは先進医療費や自由診療費用、差額ベッド代や雑費(パジャマ・テレビ代等)などです。
これらは自身の選択によりある程度費用を抑えることができますが、治療内容によってはその効果から自由診療を選びたい場合や、小さな子どもが病室に来るなどの理由で個室にせざるを得ない場合もあるでしょう。
なお、自由診療とは公的医療保険制度が適用されない治療のことで、保険適用外の新薬や最先端の医療等を受けることができます。
例えば未承認の抗がん剤の使用や、美容整形などがあります。
(公財)生命保険文化センター「平成25年度 生活保障に関する調査」によると入院1日あたりの自己負担費用は平均21,000円になっています。
これは差額ベッドや食事代などの健康保険が使えない費用も含め、高額療養費制度による給付を受けた後の費用です。
当データは日本全体の平均ではありませんが、入院給付金日額の一つの参考にできます。
入院限度日数の選択時は入院日数の実態を知る
医療保険では1回の入院で保障する日数に限度があります。
これを「入院限度日数」や「支払限度日数」などといい、30日型・60日型・120日型やもっと長期の商品もあります。
では、選択の上で参考になる入院日数の実態をみていきましょう。
厚生労働省「平成26年(2014)患者調査の概況」によると、退院患者の平均在院日数は31.9日です。
平均在院日数は平成2年をピークに減少し、今後も短くなっていくことが予想されます。
さらに、このうち14日以内に退院した人は、病院が67.0%、一般診療所は83%を占めています。
一方、病気によっては、入院が長期化することがあります。
同調査結果によると、病気別の平均入院日数は、糖尿病が35.5日、脳血管疾患89.5日、アルツハイマー病266.3日、統合失調症等546.1日となっています。
また、同じ病気でも年齢が高くなるほど入院日数が増えていきます。
脳血管疾患の場合、35歳~64歳の平均は46.9日ですが、65歳以上の平均は100.7日です。
長期入院の保障を手厚くすれば安心ですが、そうすると保険料が上がります。
これらのデータを参考に自分が必要とする入院日数の選択をしましょう。
先進医療特約を選択するかは治療事情を知る
医療保険は各保険会社でさまざまな特色を出すために多種多様な特約が準備されています。
特約を付加するときはその必要性を確認しましょう。
なかでも先進医療特約は多くの医療保険で付加できるようになっています。
しかしその保障内容は保険金額や保障対象などに違いがあります。
では先進医療とはどのような治療なのでしょうか。
先進医療とは高度な医療技術のなかでも、安全性や治療の効果のある技術として厚生労働大臣に認められた治療です。
医療技術ごとに適応症および実施する医療機関が限定されていて、厚生労働大臣が認める医療技術・適応症・実施する医療機関は随時見直されています。
また、健康保険対象の医療との併用が認められていますが、先進医療にかかる費用は全額自己負担です。
厚生労働省「平成28年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」をもとに計算した1件当たりの平均技術料は、例えば重粒子線治療は約310万円、腹腔鏡下広汎子宮全摘術は約75万円、前眼部三次元画像解析は約4千円となります。
一口に先進医療といっても治療内容によって差があり、医療施設によっても金額が異なります。
日本人の死因第1位であるがんの新しい治療として、先進医療の陽子線治療や重粒子線治療が注目されていますが、この治療法は全てのがんに対して行えるものではなく、治療できるがんの部位やがんの状態などが定められています。
厚生労働省「先進医療を実施している医療機関の一覧」によると、平成29年6月現在、陽子線治療を実施している医療機関は12施設、重粒子線治療については5施設しかありません。
高度な技術ゆえ、どこでも治療を受けられるわけではありません。
そのため、先進医療を受けようと思うと、治療費以外にかかる自分の交通費だけでなく、付き添いやお見舞いに来る親族の交通費やホテル代なども必要になる可能性があります。
これらの事情をふまえ、先進医療特約によって何を保障しているのか、治療費だけなのか、交通費まで出るのか、それとも費用に関係なく定額なのかなどを確認しましょう。
まとめ
医療保険に加入するときには、制度やデータ、調査結果等を参考にすると保障の内容を決めやすいです。
今回は、「医療保険に加入する前に知っておきたい3つのこと」として、医療保険の基本的な選択事項である「入院給付日額」「入院限度額」「先進医療特約」にかかわるデータや医療事情をご紹介しました。
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コラム執筆者プロフィール
松原 季恵 (マツバラ キエ) - CFP®
銀行、損害保険会社での勤務経験から、多くのお客さまの相談に乗ってきました。
ファイナンシャルプランナーとして独立した際は、ライフプランを軸に「お金で楽しい毎日を」を心がけて情報発信しています。
ファイナンシャルプランナー 松原 季恵
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
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掲載日:2019年12月17日
他にもある!医療保険の選び方ポイント
医療保険に加入する際、上記コラムに加えて検討したいポイントを確認してみましょう。
図 他にもある!医療保険加入時のポイント
- 保険期間と保険料払込期間
- 保険料払込方法
- 特約(オプション)
ポイント1 保険期間と保険料払込期間
保険期間と保険料払込期間は、以下のように分けられます。
表 保険期間と保険料払込期間
保険期間 | 保険料払込期間 | |
---|---|---|
定期型 | 保険期間と同一 | |
終身型 | 終身払 | 有期払 |
- 定期型
- 保険期間が、10年、20年などの年数で決まる「年満了(更新)タイプ」と、70歳、80歳までなど年齢で決まる「歳満了タイプ」があります。
- 年満了タイプは、保険期間が満了すると、そのときの健康状態に関係なく自動更新され、そのときの年齢や保険料率で新たに保険料が計算されるため、通常は更新の度に保険料が高くなります。
- 終身型の終身払
- 保障が一生涯続き、保険料は一定で、保険料の払い込みは一生涯続きますが、月々の負担は「有期払」に比べて軽くなります。
- 終身型の有期払
- 保障が一生涯続き、保険料は一定で、何歳まで払い込むかを選択できます。
ポイント2 保険料払込方法
保険料の払込方法には、毎月払い込む「月払」や半年ごとに払い込む「半年払」、毎年1回払い込む「年払」などがあります。
一般的に、月払より半年払、半年払より年払など、まとめて払い込む方法をとるほど保険料が安くなります。
ポイント3 特約
医療保険にはさまざまな特約を付加することができます。主な特約についてみてみましょう。
- 特定疾病(三大疾病)保障特約
- 三大疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)により所定の状態になったとき、または、死亡・高度障害になったときに保険金が受け取れます。
- 女性疾病入院特約
- 女性特有の病気や、女性に発生率の高い病気で入院した場合に入院給付金が受け取れます。
- 通院特約
- 入院給付金の支払対象となる入院をして、その入院の直接の原因となった病気やケガの治療を目的として退院後に通院した場合、通院給付金が受け取れます。
- がん手術給付金
- 責任開始期以後の保険期間中に初めてがんと診断されて手術を受けたとき、手術の種類により、入院給付金日額の一定倍の給付金を受け取れます。
- がん診断給付金
- 責任開始期以後の保険期間中に初めてがんと診断されたときに受け取れます。
このように、保険期間と払込方法の選択や特約の付加によって、保障内容と払込保険料に差が出てきます。
上記ポイントを参考に、ご自身に合った医療保険を探してみてくださいね。
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